夏の甲子園大会の予選が中止となった。
夏の風物詩。
毎年多くのドラマがあり、感動の名シーンが生まれる。
甲子園で活躍した選手たちが次のステージで活躍するのも楽しみの一つだ。
当然プロのスカウトも注目しており、ここでの活躍によってプロに行けるか行けないか決まったりもするため、この大会にかけている選手もたくさんいるというのも事実である。
いわば、選手たちの就活の場と言っても過言ではない。
そしてそうではないにしても、ここを目標に3年間頑張ってきた選手たちが、最後の大会を迎えることができなかったわけだ。
それぞれ抱えるいろんな思いがあったはずだろう。
当然、悔しいし、やりきれない思いがあるだろう。
どこかで、この大会の代わりとなる大会を地方大会(県)だけでもいいから開催してほしいというのが私の意見である。
もちろんこれは高校野球に限った話ではなく、どの部活にも言えることであるが。
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201X年、高校3年夏
夏の甲子園大会県予選
普通の公立高校の内野手兼ピッチャー。背番号は5
この日はベンチスタート。
2番手ピッチャーとして登板予定だった。
いい選手を集めている明らかな格上の高校相手に善戦、終盤まで3対3で両者1歩も引かない展開。
そろそろ出番が来るはずだった。
スコアは5対3
試合は終わっていた。
涙も出ない。
受け入れられない。
終わったのか信じたくない。信じられない。
今まではずっとレギュラー。試合に出なかったことは一度もなかった。
よりによって最後の大会。試合に出ることなく、高校野球人生は終わってしまった。
まわりのみんなはすっきりした表情をしていたが、そんな表情をできるわけはなく、
言葉も発せなかった。
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あの時、試合に出ていたらどうだっただろうか。
家族、部員、保護者、友達、野球を知ってる知り合い、コーチ、いろいろな人に
なぜ試合に出なかったんだ、なぜ投げなかったんだと。出てたら結果は違ってたかも。
と言われた。自分もそう思った。
この周りの発言で余計に悔しくなった。
そう。監督の明らかな采配ミスであった。
監督の決断が1人の人間をこれほどに苦しめるとは。
5年以上経った今でも夢に出てくる。
あの夏の暑い日。
この試合に出てる夢。
この試合に出て活躍してる夢。
この試合が始まる前の夢。
いいところで目覚める。
ああもうとっくに終わったんだった。
数年経ってんだよもう。バカだなって思う。
自分はこんな人間ではなかった。
割といろんなことを経験し、受け入れてきた。
この件も受け入れられているはずだった。
でも心のどこかで受け入れられてないのかもしれない。
その決断から逃げている。たぶん。
バカだなと思うでしょ?
高校野球ってそれほどバカにさせちゃうんです。
正直な事を言うとトラウマだ。
今でも甲子園の中継、予選の中継を見るとプレーをしている選手を羨ましく思ってしまうし、なんか頭の片隅にあの時の記憶がフラッシュバックしてしまう自分がいる。
これを年寄りになったときまで一生引きずるんだろうなとも思う。
でも自分は恵まれている方なのかもしれない。
自分が試合に出ていなくとも、試合に負けて、終えることができているから。
ただ、今年の高校球児はそうではない。
試合すらできないで終わる可能性がある。
受け入れられないと思う。
どこに怒りをぶつけていいのか、気持ちの整理が全くつかないと思う。
後悔のない終わり方をしてほしい。
そう言われてもめちゃくちゃ難しいかもしれないが。
すっきりした終わり方をしてほしい。
今まで頑張ってきた人たちのために、後悔のない終わり方を偉い人たちは考えてあげてください。
どうか今まで頑張ってきた日々がトラウマにならぬよう。