仕事×恋愛。
それは少しワケありな恋愛だった。
劇中に描かれている、入社の研修、研修~配属までの流れが妙にリアルで。
「こんなはずじゃなかった」という社会人生活が入社1年目~5年目くらいの若手社員は誰もが思ったであろうことが鮮明に描かれており、心を打たれてしまった。
希望した部署に行けず、絶望する様。やりたい仕事はできず、ただただ毎日が過ぎていくのを待つだけ。そしてその「何者でもない自分」に嫌気が差す日々。
これは原作のカツセマサヒコ氏の実体験も含まれているのだろう。
毎日の発散は週末、仲の良い同期と朝まで夢を語り酒を飲み明かす。
劇中にもあったが、そんな朝までバカみたいに語って飲み明かす日々が若くて素晴らしい青春の1ページなのかもしれない。
ちなみにこの同期役の井上祐貴の役も見事にハマリ役で、かっこよくて一気に好きになってしまった。
そして恋愛。今流行りの沼というワードが正しいのだろうか。
北村匠海演じる主人公「僕」が、黒島結菜演じる「彼女」に一目ぼれをする。
出会いは明大前で行われた就職内定者の飲み会。
このとき「僕」は大学4年生、「彼女」は大学院2年生という事になる。
「私と飲んだ方が楽しいかもよ?笑」
こんなショートメッセージから2人は飲み会を抜け出すこととなる。
まあこんなメッセージが年上の美しい女性から来る時点で勝ち組ではあるのだが。(笑)
こうして何回かデートを重ね、付き合う事となるのだが、
彼女にはある大きな秘密があった。
幸せな彼女との日常がたくさん描かれており、
「うわーこんな美人な彼女と俺もこんなことしてえなあ」なんて思って観ていたが、
3年ほど経ち、何となく別れを予感させるシーンがあった。
旅行先で訪れた高級ホテルのスイートルーム。こんなに幸せそうなシチュエーションなのに、別れについて明確に言葉が出てるわけではないのだが、その2人のシーンにはどこか切なさが感じられて、ああそろそろ別れてしまうのかな。と思った。
仕事が思うようにいかず、好きな人と別れることになるとすべてを失ったような気持になる。実際このシーン。北村匠海演じる「僕」は抜け殻のように動けなくなり、
会社を数日間休むことになる。
その人がすべてで。
他に周りを見渡せばたくさん女性はいるのに。
その人と費やしてきた時間、思い出。すべてがなくなってしまうような気がする。
仕事が上手くいっていなかっただけに余計に。
最後の「僕のことを少しでも好きでいてくれましたか?」というセリフのシーンでは、不覚にも涙が出そうになった。
彼女には夫がいた。
「残酷だったなぁ人生は」思っていたより
この歌い出しでエンディングを迎える。
実際にその通りかもしれない。
Cメロの
終わりは何も告げず始まった もう君のいない季節も選んでよかったと思う。
という歌詞を聴いて「ああぁあ」となってしまった。
彼らの作る曲はCメロでも容赦ない(褒め言葉)
また、劇中に出てくる曲がいちいち名曲で驚いた。
若者も必死にもがいている。
生き方を見失ってる人、目標や楽しみを失っている人がたくさんいる。
「何者かになろうとしている」
このレビューを書いている私もその中の1人だ。
そんな若者達が必死に生きている様を象徴したような作品であった。